神様

「神様」

 人が生きるのは神様がいるからか。(笑)

 

もう何も思えない。何も考えられない、どんなしかめ顔しても、何も確かめようともしない。

 

他人(ひと)ばっかりがよく見えて、自分には何もないと思い知る。いつからかこんな何も知らない自分を、逆恨みで通り過ぎ、ひとりが嫌な筈なのに、ひとりに縋ろうとする自分が生れる。

 

平安とは何か、幸福とはどんなかたちか。それを知るまでにこの世にいようと思うことさえ忘れる。“人は皆孤独”なんて言葉がバカらしく思える。そんなつまらないこと、神様はやめればいいのに、人生、人にとって通り過ぎるほど短いものでもない。孤独が鳴り終わるまでに、いろんな苦情に陥り、考える。たいしたことでもないのに、それをいきがる僕は、あたりかまわず嫌気をふるう。帰り道を探していけば、果てのない闇にふち当たり、とまどいかかえて、背中をつかむ。静かな場所で白く笑えば、恐怖と愚弄の板ばさみ。“野暮な生き方だね”と一言誰かに言われて、全部の覇気も消え失せた。“ばかばかしいや”の口癖が孤独に逃れる僕の踵を吊るす。最後の一部袴の一段も、眉間にしわをよせながら、しかめ顔で歩いてゆく。自分を見殺したもうひとりを探して。

 

頭かかえて、明日の自分を考える。シャープペンシルの芯を折っては出し、折っては出し、しながら、明日の自分を考える。何故こんなに考えなきゃいけないのか。考え出せばきりがない。“性分さ”なんて言ってしまえばそれまで、あとは何も残らない。ここまで来て、どこへ行くのか。考えればわからない筈だ。

 

人は考えない。きちがいも真面目も皆、考えることが嫌いだ。イヤみな僕を指さして笑いやがる。情けない、情けないなんてたてまえおとして素直に戻る。

 

人影がこんなに嫌なものだったなんて、笑いたい、笑いたい。人前気にせずひとりで笑いたい。僕はひとりで生きたんだ。家族に見守られても、友達に囲まれても、僕はひとりで生きたんだ。この意味は誰にもわからず、僕も隠し続ける。やがてひとりが天国に還るまで。

 

これから楽しいことあるのに雨が降ってきた。残念だねなんて思う前に今を楽しむこと考えたよ。

時計見ながら迫ってくる時間数えてシャープペンシルの芯おっちまった。あと、またどのくらいの時間待てば楽しい日が来るのかね。小さな砂漠の上走り続けた。おんぼろな脳ミソはところどころ砂丘にのまれながら、空の雲まで走ってゆく。

 

耄碌―――。

 

世の中の勢いが溢れすぎて、今、何が起こっているのかわからない。いつもいつも思うこと、この人間のやりとりが俺には耐えられない。早くわがままを聞き入れてほしい。もう人にあわせてもうろうとしらけ笑うのは嫌だ。明日命がなくなるかもしれない。皆そんな運命を走ってるんだ。とち狂うひとりがいてもおかしくはない。きっと笑われるだろう。

 

死んだ後に俺の姿を見られれば笑い者に堕ちつくだろうに。どこまでいってもそのうやむやは晴れることはない、と、いつか自分に言われた。ああ窮屈だ。疲れてしまう。人の間というのは何故にバカらしさを覚えてしまうのか。すべてわかった気持ちになる俺はやっぱり臆病者か。…負けてしまうのか。神様がくれた人生、なのに、罪をくり返す俺は どんなに笑っても満足はない。罪人の一連だ。

 

臭素公毒―――~鉱毒

 

みんなきえてしまえ、僕の満足が崩れてしまうようにみんなきえてしまえ。何もない一日が、ひと言 言う時間ほど短く過ぎてゆく。むなしさ抱えてこの世の中 生きてはゆけない。まして若さ、というのは そんな醜態は鼻につく。見苦しい面影は、きえることなく満足にだってかえられない。縦に並んだ夢ドミノを、たったひと指でひっくり返してしまうこと、はかなさ、とてつもなくバカらしい。 一度はすてた臆病顔なのに、また明かりもつけずに 沈んでしまう。 人の世を生きる故の はがゆさだ。

 

デリケート

 

昔いっしょにいた仲間のひとりが困難にたたされた。あの人に続くひとりめ。

どこかに置き忘れてきた ひ弱さが、いっぺんにしてのしかかる。苦しさだ。

初めて逢った時のことがまるで昨日の夢に沈むように、たとえようもない暗さのまま

見えなくなる。 僕がどうすればいい、自分で精いっぱいの臆人がまた、病の

なかから ひと言ふた言 うわついた言葉を話し始める。今日の君を覆えないままに、

明日の君を自分といっしょに思い始める。

 

正気

 

もう誰とも会えない、会いたくない。貴重な臆病だ。つぶされたくはない。そういうふちに立つ時、自分の“満足”というものを考え始めると、体が悶え始め、いっこうに正気に戻ることなく狂い始める。

 

あの笛を聞いてると子供のころを思い出す。

昔を懐しむあの音色は今もかわらないで、

ずっと響いてる。 いろんな思いといっしょに

拾い始める両手を、何にも隠せないでどこまで

か 君は歩いてゆく。 山からは晩秋の冷たい

風がふき、丘の上の荻がゆれる。

昔ふいた風をもう一度感じたいと、また

あの娘を思いながら 秋の山を見る。

 

 

『しかたないんだ. 俺をうらまんでくれ。

 これも歴史の流れ、どうしようもないことなんだよ。...』

 

『いつまでこんな世の中が続くのか

 絶え間ない悲しみがそこらに転がるのは

    もうウンザリだ。』

 

『ところで あなたはどこから来ましたか?

 何も持っていないのなら抵抗しないで

 我々の指示に従ってくれ』

 

『あれ、あなたはこないだの…

 そうでしたか。 まさかあなたがそちら側の

 人間だったとは。…悪く思わないでほしい

 私も意志で こんなことしてるのではない、 許してくれ』

 

 

僕の存在の難しさ―――

 

何も考えられないというのは無意味なこと なのかい? ねえ! そこの誰か! 今君は、どんなこと 考えてる? 教えたくなくても 教えてほしい! どんなこと 思ってるの? あ、皆今TV見て笑ってるけど 君も面白い? 何も考えないというのは こんな時 どういう思惑で見られるの? 僕は以前まで無意味じゃないと思ってたけど、今になって、つまらない偏見は無意味だ と 思い始めそうなんだ。 いくら首ふっても その確信になるいやらしさはきえない。 まったく くやしさだけが残るこの一日よ。表通り手をふって歩いてみな。一発で カルチャー・ショックだぜ! 意味のないくり返しよ。(__)

 

チ○ポ ブッタ切る精神ね! わかった◆π

 

怒りまくった人の部屋を出て、階下のギャンブラーへ。そこには、いろんなフラレ人が集結していた。テーブルクロスをひっくり返した輩は 皆 表行き。どこかへ消えろだ、飛んでけだので大にぎわい。グラスについだ64年ものの格おちのワインを飲みほし、また二度目のかけごとに溺れてやった。持ち金 50セントのプア・ライフマネイ。“ムダにはできんぜ.” 横の人がひやかし、ルーレットをまわした。

人がいいマスターがおどり調子にしわがれた声で 俺にもう一杯のウォッカ、まずは おめでとうの祝杯さ、と20セントを俺の手にほうり投げた。

 

表通りへ出た俺の目の前に、やせた遊女があらわれ、最後のゲームをつきつけた。首を横にふった俺は そそくさとその場を立ち去る、“イカレポンチ”の一声を聞いて また安い一日が始まるのさ。今度は、部屋に帰っても怒られないようにしなきゃ。

 

髪をつかんで起こされた俺は二日目、煙たいけれども人気が程良くひいたカウンターへよたれながらにも辿り着く。

 

「ボー―ン! ボー―ン!」と二度鳴る銅鑼のような呼び鈴が、ルーレットの上で踊っている。指揮するのはきまって黒髪のレザーフォックス。横並びにならんだベアーズの黒ひげが気になりはするけれども、今はそんなこと言ってられない…。すぐにでも血相変えて俺の懐へと飛び込んできそうな勢いなのだ。

 

向うむいて座るカウンター男が二人、こっちむいて座るテーブル男と女が各一人。軽い指揮棒持って澄ました顔でいつまでもルーレット上の“金”を集めているのはレザーフォックス、いつの相場がこんなに嫌に感じたこともない。

 

「はやくしとくれよ!有り金いただくからさ」

 

微笑で詰めるキツネ女はいつになく上機嫌。“俺”はひそかにそいつのスカートの中を覗き見た。ベアーズは気にしないでグラスを磨いている。

今度ばかりは“俺”の勝ちのようだ。

 

恐怖――――――

 

今、自分が何をやってるのか わからずにいたいものだね

  自分をわかっていながら 追い込んでみるのも いいものだ。